科学イベント

もう10日ほど前のことになるが、日本科学未来館で小学生を対象に「うちゅうのおはなし」と題して講演をしてきた。これは今、ほぼ1ヶ月に1回のペースで行っている一般相対論講座でお世話になっている NOTH.JP の方々からのご提案で実施したものである。前橋の小学校で出前授業をしたことはあるが、今回のように特定の小学校に限らないイベントは初めての経験だった。

いろんな実験(失敗もあった)も交えながらの講座だったのだが、子供達が真剣な表情で聞いてくれて、終了後には「すっごく面白かった!」と言ってくれた子もいた。子供達は宇宙のことも結構知っていて、中には「宇宙は何もないところから始まったって言うけど、何もないならどうして始まったんですか?」という、大人顔負けの質問もあった。途中には子供達が想像する宇宙の姿を模造紙に描いてもらったのだが、僕らが予想していたよりもずっと子供達の知識量が多かったのに感心した。単なる「オモシロ実験教室」に終わってしまっては科学の啓蒙にはならないので、僕はちょっと難しい比の計算も交えながら地球の大きさを昔の人がどうやって測ったのかなどを取り上げたのだが、これも子供達は楽しんでくれた。やっぱり子供達は我々大人が思っているより力があるのだ。教育とは種を蒔くことであると常々思っている僕としては、やはり安易に「難しい」もしくは「難しそう」という声に迎合せず、いつか発芽することを期待して「ちょっとだけ背伸びすれば届きそうなくらいの難しいこと」を見せてあげるべきなのだという想いを改めて強くした。

反省点としては、子供達全員からコメントを引き出すことが出来なかったことがある。どうしても「ブラックホールって知ってる人、手をあげて!」という方式でやると、宇宙に詳しい子しか発言できなくなる。それが何回か続けば、たとえ知っていることでも自信がないと発言できなくなる。どこか一つ同じ学校の子供達が集まっていて顔見知りでないときはなおさらである。NOTH のスタッフの方のおひとりが、「正しいことしか言えないと残念ですよね」とおっしゃっていたが、本当にその通りだ。子供達がいい意味で好き勝手にできるように、次回は工夫したい。

それともう一つ、時間の関係もあって子供達に伝えられなかったことがある。以前「檄」にも書いたことなのだが、「学校というところは勉強するところである前に勉強の仕方を学ぶところである」ということだ。当たり前だが、人生は学校を卒業してからの方がずっと長い。だから学校で学ぶことは当然、卒業後の長い人生に役立つものでなければならない。そうなると学んでおいて一番得をするのは「学び方」だと思うのだ。

学校では毎日新しい何かを教わったり経験したりするわけだが、社会に出て働いてからもそれは全く同じである(もちろんそれに気づかずに何も学ばずに生きていく場合もあるが、そのときは同じ過ちを繰り返すことになったりする)。だから学生時代に「学び方」を習得していると強い。もちろん、働きながらの学び方や、家庭を持ってからの学び方など、時と場合に応じて変化させていく必要はあるが、「新しいものが現れた時にそれをどうやって咀嚼し、自分の一部にしていくか」という点に関しては本質は同じである。

小学1年生にこのことをどうやって伝えるか、これはなかなかの難問だが、非常にやりがいのある課題である。幸いアンケートに「1ヶ月に1回くらい、定期的にやってほしい」というコメントも頂いたので、次回に向けて考えていこうと思う。