【夜学/Naked Singularities Vol.0 開催レポート】その1
「学問は机の上だけでするものではありません。もちろん物理学も─。
サイエンス×カフェでもなく、サイエンス×バーでもなく、今回は物理学×クラブ!「夜学」は夜にする学び。物理学を中心とした様々な学問を、クラブ仕立てのスペースで体感するイベントです。東京学芸大学宇宙物理学研究室のメンバーが中心となって、パフォーマンスも行います。
学校でやる昼の学びを既存の枠組みとするなら、「夜学」はその枠を外す学びの場です。夜には不思議な高揚感があります。ときには怪しさや妖しさも。
宇宙の始まりや宇宙の果て、ブラックホール、そして時空や次元…。それらの面白さを体感する、新しい学び方を提案します。物理学は、世界を丸ごと受けとめるための方法です。この空間に、物理を浴びに来て下さい!」
このコンセプトで実施した超実験的エンターテイメント「夜学/Naked Singularities」Vol.0は大盛況のうちに終了しました!プロトタイプ版とも言える今回でしたが,本格的な展開となる次回からの成功を確信するものとなりました.
「夜学/Naked Singularities」では物理学をエンターテイメントとして提示しますが,趣旨は子ども向けの科学教室や科学ファン・物理ファン向けのサイエンスイベントとはかなり異なるものです.私自身,様々なところで科学イベントを行ってきましたが,そうしたイベントでは「昼間の学問」しか伝えられないことに忸怩たる思いを抱いていました.
例えば集客のために,「難しい数式は一切用いずに,わかりやすくお話します」という宣伝文句を用いることはよくあります.そうすれば,当然表面だけのお話しかできません.逆に数式を多用すれば,実質的に科学ファンのためだけのイベントになってしまいます.一部の方だけが盛り上がってしまい,ほとんどの方が白けてしまったことも一度や二度ではありません.「間口を広げようとすれば浅くて簡単な内容しか話せないし,深い話をしようとすればコアなファンしか集めることができない」という,どんな分野でも,どんな業種にも共通するジレンマといつも戦っていました.
しかし僕は,「本当は両立が可能である」という信念も持っていました.物理嫌いの人はもちろん,勉強嫌いにも学問をエンターテイメントとして体験させ,しかもその後に自ら学びたくなる気持ちを芽生えさせることは不可能ではないはずだと.それは全く新しい学びになるだろうけれども,勉強嫌いな生徒や斜に構えた「大人」連中が興奮し,その後には「ちょっと勉強してみるかな…」と思わず言い出してしまうようなことができるはずだと.恥ずかしながら,高専教員時代には6年連続でベストティーチャーに選ばれ,「やる気の無料配布」という二つ名まで与えられた自分としては,今度はそれを全世界相手にやってみたいと思っていたわけです.
科学ファンや宇宙ファンの期待を良い意味で裏切り,「特に学ぶ気はなかった」という人にまで「来て良かった!」と思わせられるかどうか.それにはお行儀のよい講座や単に盛り上がるイベントではなく,文字通りかっこいいイベントをやろうと.そのために自分が大好きなクラブ,そして「夜」というセットアップを用意しました.
僕はパフォーマティブな講義をすることが多いので「見せ方がうまい」と評価していただくことがよくあるのですが,当然のことながら「信念>コンテンツ>見せ方」の順で意識しています.というか,信念がなければコンテンツは決まりませんし,コンテンツが決まらなければ見せ方は決まりません.クラブも音楽も照明も,ある意味当然の帰結なのです.
「夜学」では,コンテンツとして以下のラインナップを揃えました.
第1部 19:00〜20:00
• クラブタイム
• opening:「保存則」
• performance: 実は深い実験
• performance: 只管打坐・只管打算 (calculation of curvatures)
第2部 20:00〜21:00
• クラブタイム
• talk: 少し背伸びする物理
• クラブタイム
• visual: recognition
第3部 21:00〜22:00
• クラブタイム
• performance: さふぁり・ぱーく
discussion on Infinite Derivative Gravity and Black Holes
• visual: mathematical physics & shape
第4部 22:00〜23:00
• クラブタイム
• talk: 「際(きわ)」
• フリータイム・クロージング&次回予告
だいぶ長くなりましたので,それぞれがどんな出し物だったのかは少しずつレポートしていきますが,「物理学が本来持っている凄さで勝負できる」コンテンツを揃えました.
「見えない世界を観る」,「見立てる」,「気配を感じる」,「極端で遊ぶ」,「枠の向こうへ行く」…,といった物理学の定石とも言える数々の技でもって世界を捉える,しかもそれをクラブ仕立てのスペースで体ごと浴びる空間が今回初めて出現しました.次回は10月か11月に開催する予定です.本格開催となる Vol.1 をお楽しみに!
信濃毎日新聞「時空の旅へ ようこそ」第17回〜第20回(最終回)です
7月から連載を開始した「時空の旅へ ようこそ」(信濃毎日新聞)も,12月17日に掲載された第20回を持って終了しました.無事に最終回までたどり着くことができ,本当にホッとしています.最終回の画像は,はからずも大団円といったイメージのものになりました.改めまして,このような機会を与えていただいたことに心から感謝申し上げます.皆様,半年間お読みいただきまことにありがとうございました!
(下の画像:「時空の旅へ ようこそ」第17回:信濃毎日新聞2018年11月19日朝刊)
(下の画像:「時空の旅へ ようこそ」第18回:信濃毎日新聞2018年11月26日朝刊)
(下の画像:「時空の旅へ ようこそ」第13回:信濃毎日新聞2018年12月3日朝刊)
(下の画像:「時空の旅へ ようこそ」第20回:信濃毎日新聞2018年12月17日朝刊)
信濃毎日新聞「時空の旅へ ようこそ」連載終了しました!
信濃毎日新聞の科学コラム「知・究・学」で連載させていただいた「時空の旅へ ようこそ」も,本日12月17日に掲載された第20回で,半年間の連載が終了しました.あっという間の半年でした….特に後半に入ってからは加速したように感じます.量子重力理論など,理論物理学のテーマを900字でまとめることは決して簡単なことではありませんでしたが,私たち物理学者が何に感動し,何を目標として自然と向き合っているのかをお伝えすべく,誠心誠意書かせていただきました.私を育てて下さった故郷の皆様へ,少しでも恩返しになっていれば幸いです.
(下の画像:「時空の旅へ ようこそ」第13回:信濃毎日新聞2018年10月15日朝刊)
(下の画像:「時空の旅へ ようこそ」第14回:信濃毎日新聞2018年10月22日朝刊)
(下の画像:「時空の旅へ ようこそ」第15回:信濃毎日新聞2018年10月29日朝刊)
(下の画像:「時空の旅へ ようこそ」第16回:信濃毎日新聞2018年11月5日朝刊)
初の著書『ブラックホールと時空の方程式』本日発売!
『ブラックホールと時空の方程式:15歳からの一般相対論』(森北出版)が本日発売されます!物理学で扱う対象は力やエネルギー,電流や磁場など目に見えないものが多く,物理学はわかりにくいとよく言われます.それは私たち研究者にとっても同様で,「どうやったらその世界が観(み)えるようになるか?」を考えることが研究そのものになります.また,それをどうやって伝えるかを考えることが「物理とは何か?」を考えることに直結します.この本では,これまでの教育経験や研究を踏まえて,ブラックホールを表す数式をテーマに,物理はどうやってそうした「目に見えない世界」を観えるようにするのかを書きました.ぜひご覧ください!
- 作者: 小林晋平
- 出版社/メーカー: 森北出版
- 発売日: 2018/12/12
- メディア: 単行本
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大人の科学バー・新宇宙編第9回
今週末11月30日は「大人の科学バー・新宇宙編」第9回でお話しします.
イベント|KIWI
僕は隔月でお話しさせていただいています.ありがたいことに毎回ご好評をいただいているこのトークイベント,今回も増席して満員御礼!なかなか席が取れないイベントになっているようです.次回の予定は,決まり次第ギャラリーキッチンKIWIさんのHPにて告知されますので,ご確認よろしくお願いします!